2012年11月19日
今回は、デカンタの特集です。
ご存知の方も多いと思いますが、ワインの場合、デカンテーションは澱を取り除くために行われます。ワインの適度な酸化を促すためとも言われていますが、学術用語でデカンテーションと言えば、溶液を静置した後に容器を移し替えることで沈殿物を取り除く作業の事を指しますから、やはりメインは澱を取り除くことにあるのでしょう。
ところで、Oxford English Dictionaryで語源を見てみたところ、「容器(ジャグ)の角ばった口」という意味合いがあるようです。ですので、元々は静かに注げるような細工を施すことだったのかもしれません。
ただ、そう考えると面白いのは、ワインの場合、デカンタはワインの瓶からワインを静かに注ぎこまれる側です。ワインの瓶の口には注ぎ口としての切り込みはなく、逆に、注ぎ口のあるデカンタに静かに注ぎこまれることになります。となると、語源的には本末転倒のような気もします。
もっとも、ワインの瓶からデカンタにドボドボ入れて、デカンタの中に澱が沈むのを待っていたら味がおかしくなるのは確実ですから、語源的にはともかく、こういう操作と、そういう意味を持つ言葉として落ち着いたのでしょう。
さて、今回ご紹介したデカンタの中には、どう見てもワイン用ではなく、ウィスキーやブランディーあるいはリキュール用のデカンタもあります。少し調べてみたのですが、この手の酒に関しては、特にデカンタを使う必要はなく、寧ろ、売られている瓶のままの方が気密性は良く、保存に適しているとのことでした。恐らくは、大きな樽で保存していた酒を小分けにして使っていた名残なのかもしれません。
では、ということで、今を生きる我々のための使い方を考えてみました。
まず、自家製の梅酒のような、果実を漬け込んだお酒を入れてはどうでしょう。大きな容器に入れたまま、杓子で汲みだすのも良いですが、お客様が来た時にはこういうデカンタに入れた方がおしゃれです。
あるいは、もっと本来的な使い方をするとしたら、これ用でしょう。
最近、スーパーでも良く見かけるようになった3Lとか4Lといった大型ペットボトルに入ったウイスキーの小分けです。流石に、このボトルからグラスには注ぎにくいですから。こう考えると、大型量販のお蔭で、デカンタが本来の役割を取り戻しつつあるのかもしれません。